腹黒王子の取扱説明書
「わかった。僕の方でお姉さんを看るから、心配しなくていいよ」

「それから……姉はヒモを作るような女じゃありませんよ。夜のバイトだって、父の医療費や僕の大学の学費を払うためなんです」

中山麗奈の弟が真っ直ぐな瞳で俺を見据える。

どうやら俺が彼女を罵倒した声が、彼にまで聞こえたらしい。

「…僕が悪かった。君の姉さんには後で謝るよ」

俺の言葉に中山麗奈の弟がホッとしたような表情になる。

それから、お互いの連絡先を交換すると、俺は彼と一緒に彼女の部屋に戻った。

ドアを開けると、彼女は苦しそうに息をしていた。

無理して歩くからだ。

「うちでお姉さんを預かるから、2ー3着ほどパジャマとか着替えを用意してくれないか?」

「はい」

彼女の弟が慌てて着替えを取りに戻る。

俺は中山麗奈に視線を戻すと、胸ポケットからハンカチを取り出して彼女の額の汗を拭った。
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