【完】山崎さんちのすすむくん
藤堂くんが東下して暫く。
今度は近藤局長をはじめ、永倉くん、尾形くん、武田の三人の助勤が同じく隊士を募る為に江戸へと発った。
これ程大掛かりな募集は初。
どのくらいの人数が集まるかは定かでないが、戻ってきてからが俺達監察方の本領を発揮する時となるだろう。
「烝さん、ほら早く早くっ」
賑わう洛中の通り、夕美が珍しく急ぎ足で俺の袖を引く。
今日は久しぶりに二人で町を歩くことになっているのだが。
「そない急かんでもええやんー別に団子は逃げんてー」
「逃げるんですよっ! 今あそこのお店大人気なんだから早く行かなきゃ売り切れちゃうっ」
なんや知らん間に詳しゅうなったな。兄ちゃんはびっくりや。
まぁ古今東西女子は皆そんなもんなんかいのー。
「あ、あそこです! 急ぎましょっ!」
「はいはい」
それでも自然と笑みが浮かぶのはこんなのも悪くないかと思えるからだ。
「まだあるかなー」
ぐいぐいと引かれるままに連れてこられた店の前。
そう独りごつ夕美の隣で、俺はひっそりと空気になっていた。
もとい、気配を消していた。
すぐ側に見知った奴らを見つけてしまったから。
……もーなんでおんねん……や、まぁあの二人ならおっても可笑しないけどや。
せやかて何も今日やなくてもええやん。此処ってそない甘味好きに有名なんか?
まぁ丁度出てかはるとこみたいやし、こんまま人に紛れて……。
「えーっ、烝さん売り切れだってー」
んのに名前呼ばんとってぇ!
と思っても時既に遅し。
すれ違ったばかりの二人が素早く此方に向く気配がした。
「あれ? 山崎さん?」
「あれ? 烝くん?」