【完】山崎さんちのすすむくん
琴尾やら林五郎兄弟やらの面倒みとった所為でつい年下相手にゃよしよしってな感じでポロっといってまうけどや。
よー考えたらこれも年頃の娘なんやし、今のん端から見たらやで……。
──『路地裏で睦み合う二人』
ぎゃーあかんあかん俺は何ちゅー想像をっ!! ちゃうちゃう、これはそんなんちゃうねんて!
ほわんと頭に浮かんだ言葉を慌てて掻き消す。
思わず変な方向に繋げてしまった原因は一つしかない。
あん時林五郎が可笑しなことゆーからやっ。俺らはそんなんちゃうねんからなっ。
夕美かて前も俺を突き飛ばしよったくらいやし、単に男馴れしてへんだけや。
うん、そーに決まっとる。
頭の中でグルグルと思考して一人結論を出すと、俺は微妙に気不味い沈黙を破って夕美の頭を雑に撫でた。
「沖田くんはあの見た目と腕の良さが相まってこの辺じゃちぃとばかし名が知れとんねん。んでこんな阿呆がコソコソしとるんや。もー大丈夫や思うけど一応これからも町歩く時は周り気ぃつけてな?」
いつもより舌もよく回る。
「あ、はい……って、そーいや沖田さんってあの沖田さんっ!?」
「あの? ……あーそーいやお前さん名前知ってやったっけ」
「カッコ良かったですもんねーあれなら確かに歴女に人気が出るのもわかるなー」
俺の言葉を受けていつも以上に元気よく喋りだした夕美は、うんうんと頷き沖田くんを思い出しているらしい。
顎に手をやり、にんまりと笑うそいつも本気で沖田くんを男前だと思っているようで。
……うん、やっぱそうやんな、二枚目な方がええもんなっ。
そう納得すると、俺は今度こそ襷を取り出した。
「ま、ほな取り合えずこいつら縛っとくかぁ」
それに、俺には色恋なんて必要ないしな。