first love




「あ、雪。」






仕事終わり、あたしとマナミが店から出ると雪がちらついていた。






「今年早いね
あー、もうすぐクリスマスかぁー。
今年も1人かぁー。」

マナミが夜空を見上げながらそんなことを呟く。



あたしは雪を見ると、
去年翔と出会った日のことを思い出す。



初雪、翔の誕生日。







「もう1人にも飽きたー。
彼氏ほしーよーーー。」


マナミが雪を見ながら叫ぶからあたしはフフッと笑った。





「マナミ、男友達いっぱいいるじゃん」

「友達は友達だもん。
ていうか、池田のこと諦められない限り彼氏できない気がするー」

「池田ねー…」



あれから、池田の話題になると何も言えなくなってしまった。



「美華は翔がいるからいいなー」

「翔がいたって、お互いどうせ仕事だし(笑)」

「美華も翔も仕事人間すぎるわ!(笑)」




うっすらと積もった雪の上を、あたしたちはヒールでびびりながらノロノロ歩く。




「あーーーー池田と付き合いたーーーい!!!」




マナミがまた叫ぶ。

そして、道行く人があたしたちに振り返る。


「もー恥ずかしいからやめてよ(笑)」





あたしたちはいつもの居酒屋に入って乾杯した。





「マナミってマイさんのことどう思う?」


唐突にそう聞いた。



「なに、いきなり(笑)
なんだろうー。
いい人すぎるくらいいい人だよね?」


「逆に怖くない?」

「は?なにそれ?(笑)」


マナミはあたしをわけわかんないと言って笑い飛ばす。



「あたしがマイさんからナンバー奪って看板も変えて、それでもあたしのこと応援してくれてるんだよ?
いい人過ぎて怖いっていうか。
あたしだったら、嘘でも、ナンバーとられた後輩に頑張ろうねなんて言いたくないんだけど」


「まあ、いい人すぎるよね」

「あたしがアヤに嫌がらせされてたときだってマイさんがキャストに怒ってくれたり、ドレス貸そうかって言ってくれたり。
一応ライバルなわけじゃん」

「でもマイさん店辞めたがってるし、ナンバーとか看板とかもそんなにこだわってないんでしょ」



「余裕すぎるよね。
マイさんが本気出したらあたしきっと敵わないきがする」




あたしはそう言ってため息をついた。





「なんか美華らしくないね」



マナミはあたしを心配そうに見つめる。





いい人だなんて、
本当のことを知ったらマナミだって言えなくなる。




いっそ言ってしまいたい。

けど傷つけたくもない。



マナミはマナミのまま、その無邪気な笑顔でいてほしい。



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