first love
だめだよ、翔。


あたし、分かっちゃったんだよ。




このまま一緒にいたら好きになっちゃう。

結局他の女と一緒だって思われちゃう。




「俺がいなくなったらお前、
死ぬだろ」

翔はそう言って、
あたしの手首を頬に当てた。




「……気付いてたんだ…」




手首に残る、たくさんのリストカットの跡。




「いつから、知ってたの?」


「初めて会った日から」









誰にも言えない秘密。

翔だけが知ってた。



「あの日、ソファーで寝ちゃって目が覚めてお前のベッドに入ったんだよ。

お前さ、無防備に寝てるから、やってやろっかなって正直思ったんだけどさ……」

「その時に、見たの?」


翔は頷いた。



「何それ。
同情?
あたしがかわいそうな女だから一緒にいたの?」



あぁ。
あたし、なんでこんなに必死になってるんだろう。


バカみたいだよね。
自分でも驚くほど、

あたし、あんたといると必死になっちゃう。




「違う。
俺はただ…」

「同情なんていらないから!
あたしは別に死にたくて切ってるんじゃない!!!」

「俺はただ、お前が死にたくなるくらい1人が怖いの分かってるから」


翔はそう言ってあたしを抱きしめた。



涙が、止まらなかった。
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