ファイブコンプレックス
「だって、じゃあミーは嫌じゃないの!?」

姉はピクリともしない。冷静だ。まるで言うことも決まっているとでも言うように。いつもながら、自分が情けなく感じる。

「美樹が嫌だって思ってるのは、明石くんと関係あったからじゃん。私は明石くんとほとんど喋んなかったし」
「でも、同じメンバーだったでしょ!?」
「私は、演奏しに行くの。美樹は自分で思い込んでるだけだよ」
「違う」
「違くないよ。自分でだらだら引きずってるだけじゃん」


苦い顔をして、美樹は俯いた。姉が言うことは、必ず核心をついていた。自分も変わらなきゃと感じながら、結局いつものように、自分で重荷にしていたのは、美樹自身ずっと判っていたはずだ。
美菜に諭されると、反論できなかった。双子は身体を分けた半身には、どうしても逆らえなかった。自分のことをよく知っている。誰よりも深く理解しているから。
美菜は愛しい妹の頭を、そっと撫でた。

「美樹の悪い癖だね、被害妄想。さて、車に行こうよ」

また、負けた。
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