ファイブコンプレックス
たるいな。
美樹は純粋にそう感じた。人の目が、昔とはこんなに変わることに、めんどうだと思った。
それでも姉は、嫌がる素振り無く歌い始めるからすごい。自分がアイドルのようにされているのは、もちろん気がついているはずだ。
どれだけ美菜は、私よりも心が広いんだろう。
少し鬱になる。ズルいよ。ミーばっかりいいとこ持ってって、私には何も残ってない。やっぱり完璧じゃないか。羨ましい。悔しい。

その時、手が引かれた。
優しい手。あったかい指。少し驚いた。
あまりにも急で、唐突で、それでも予測できたから。

双子の感覚、ってやつだ。
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