殺人姫
「テメェ何してくれんだよぉぉお!」
何この人、頭オカシイの?私が殺されなきゃ世界が滅ぶっていうの?
殺人鬼相手に今更人格を問うつもりも余裕もなかったが、何かがおかしくなって来ている事を感じ取った。
未だ優勢であるはずの自分の立場を疑っている、殺人鬼の慌てぶりは尋常ではない。

「クソックソックソッッ!こんなん最悪すぎだ…こんな事なら…」
何やら呟いているのが聞こえる。盛り立てている髪型を更に盛り上げるようにクシャクシャにしていた。
見れば、男の手からナイフの柄が離れている。

ポロリ、ナイフは鞄から地面に落ちたが、男が拾う気配はなく、私に目もくれず頭を掻いている。


もしかしたら、逃げる最後のチャンスなのかも知れない。
男は後ろを向いていて、私の足が徐々に後退しているのに気が付いていないようだった。


―――逃げれる!


そう生きる確信を見い出したとき、私の視界に殺人鬼の落とし物が映る。

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