その瞳に映りませんように
『ハシノさんって面白いよね。話してると俺も楽しくなってくる』
『そ、そう? まあ毎日楽しいしね』
いや――。
私は無理やり、この世界を楽しいもの、として見ようとしていただけ。
友達づきあいなんてそんなもん。
別に毎日は全部が楽しいものではない。
そういうことに気がつかないようにしていつも笑っていた。
そうしているうちに、
何がそんなに面白いの、とか、どうせそんなもんでしょ、とか。
本当は所持していたはずの冷めた感情を
心の奥底に追いやってしまっていたのだ。
それが、どこか異次元空間の塵にでもなっていれば良かったんだけど、
そうはなっていなくて。
私は見ないようにしていた、その自分の中の歪みのようなものを
彼の目に投影していたのかもしれない。
だからユズキくんの目に惹かれていたのだ。
にらんでいるのではなく、さげすんでいるわけでもなく、何にも興味がないような。
綺麗な花も、汚れた川も、大して変わらないものとして見ているような、そんな目に。
私は勝手に、ユズキくんだけはこの世界を『そこまで綺麗ではないもの』として、見ていて欲しいと願っていただけだったのだ。