その瞳に映りませんように
「ユズキくん、ごめん……ごめんね!」
気がつくと、私はすごい勢いで彼に謝っていた。
「え? ど、どうしたの?」
彼は戸惑った声を発しているのだけど、まぶたは上がりきっておらず、どこか本気でそう思っていなさそうな目をしている。
でもそれは、単に彼の目の造形がそうなっているだけ。
「私、ユズキくんの目に色んな妄想をしてしまってました」
「はい?」
「たいして面白くもないし、こんなものだろう世の中は、ってな感じで世界を見てるようで。何かうらやましかった」
「は、はい?」
私の中に積もり積もった何かが消化され始めていくことを感じた。
彼は何のことやら分かっていないようだったけど。
西へ西へ向かっていく夕日は、空全体と私たちを柔らかい色に染めていく。
「だって、私ってバカに見えるでしょ? 悩みとかなさそうでしょ?」
「え……そんなことないよ」
「笑ってばっかりで空っぽな子って感じでしょ?」
「何言ってるの。そんなわけないじゃん」
彼は変わらず、まぶたを伏せ、視線をどこかへ移しながらそう答えた。
「ねえ、本当にそう思ってる?」
思わず私がそう聞くと、
はぁー、と彼から深いため息の音がした。
「……一応、ちゃんと思ってるんだけどなぁ」
彼はだらっと胡坐をかき、再び赤く落ちていく夕日に目を向けた。
私も「ご、ごめん」と再び謝ってから、彼と同じ方向を見た。
彼の目にも、本当はこの夕日がとても美しいものとして、映っているのだ。