その瞳に映りませんように


「だってさー、俺にとってはコンプレックスなのね。自分の目が」


「え、そうなの?」


「それをハシノさんが好きって言ってくれて。びっくりしたけど、めちゃくちゃ嬉しかった」


グラウンド方面から、部活中の生徒たちの声がかすかに聞こえてくる。


夕日はゆっくりと姿を隠していき、

あたりが暗くなるとともに、胸の鼓動も心地よさを増していく。



「でも、私気づいてるよ。その目とユズキくんの心の中のギャップに。本当は温かくて優しいよね」


私がそう口にすると、隣でユズキくんは顔を赤くしながらうつむき、まつ毛を見せた。


そして、顔を伏せたまま、

「だから、そういうこと言われ慣れてないし、困るんですけど」

と恥ずかしそうにつぶやいた。




頭上の青は次第に色を濃くし、オレンジ色を景色の奥へと追いやっていく。



「ユズキくん、見て……」


「うん、綺麗だね」



雲ひとつない、黄昏時のグラデーション。



薄暗くなる空と少しずつ明かりを増す街の風景。



そんな美しい景色を2人で眺めていることが、とても嬉しい。



いつの間にか、私たちの手は重なっていた。



私の目から静かに涙がこぼれていく。


心の中の歪みが、少しずつ浄化されていくかのよう。



明日から、またそれなりに上手くやっていこうと思う。


でも、いつか無理やりにではなく、綺麗な世界を自分の目に映していきたい。



できればユズキくんと、一緒に。

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