ハロー、マイファーストレディ!
振り返った先では、一人の紳士がこちらに微笑みかけていた。ぱっと見たところ、マスコミ関係者ではなさそうだ。
シルバーフレームの眼鏡を掛けて、ボタンダウンシャツに、グレーのスラックス、麻のジャケットを羽織っていて、どこかきっちりとした印象だ。
はじめは、過去に担当したことのある患者さんかとも思ったが、まじまじと顔を見つめてみても、まるで見覚えがない。
ならば、たまたま見かけて声を掛けてきた道すがらの人か、報道で私の顔を知った征太郎の知り合いだろうと、私は慌てて微笑み返して口を開く。
「そうですが、私に何か?」
目の前の男性は、そのまま笑顔を崩すことなく間合いを詰めて、今度は周りに聞こえないように小声で語りかけてきた。
「あなたに、お話したいことがあります。」
「それは、どういった……」
「あなたにとって有益な情報だと思います。」
男の柔和な眼差しが、一瞬で鋭いものへと変わった。
どうしてか嫌な予感がして、暑くもないのに背中には汗が伝う。
私がなんと返したらよいか迷っているうちに、男は再び口を開いた。
「ご両親の無念を晴らしたいとは思いませんか?」
その一言に、今度は背筋が凍った。
この人は、知っている。
私が何者なのかを。
「いえ、もう、昔の事ですから。」
何とか平静を保って小声で返す。
それでも、返ってきたのは私の必死の演技を簡単に打ち崩す言葉だった。
「証拠を握っています。私なら全てを立証できる。」
その一言に思わず目を見開きながら、私の唇からは「どうして…」と小さく心の声が漏れた。
「全てお話しします、村雲真依子さん。」
数ヶ月ぶりに呼ばれた自分のかつての名前に、私はそれ以上表情を取り繕うことは出来なかった。
シルバーフレームの眼鏡を掛けて、ボタンダウンシャツに、グレーのスラックス、麻のジャケットを羽織っていて、どこかきっちりとした印象だ。
はじめは、過去に担当したことのある患者さんかとも思ったが、まじまじと顔を見つめてみても、まるで見覚えがない。
ならば、たまたま見かけて声を掛けてきた道すがらの人か、報道で私の顔を知った征太郎の知り合いだろうと、私は慌てて微笑み返して口を開く。
「そうですが、私に何か?」
目の前の男性は、そのまま笑顔を崩すことなく間合いを詰めて、今度は周りに聞こえないように小声で語りかけてきた。
「あなたに、お話したいことがあります。」
「それは、どういった……」
「あなたにとって有益な情報だと思います。」
男の柔和な眼差しが、一瞬で鋭いものへと変わった。
どうしてか嫌な予感がして、暑くもないのに背中には汗が伝う。
私がなんと返したらよいか迷っているうちに、男は再び口を開いた。
「ご両親の無念を晴らしたいとは思いませんか?」
その一言に、今度は背筋が凍った。
この人は、知っている。
私が何者なのかを。
「いえ、もう、昔の事ですから。」
何とか平静を保って小声で返す。
それでも、返ってきたのは私の必死の演技を簡単に打ち崩す言葉だった。
「証拠を握っています。私なら全てを立証できる。」
その一言に思わず目を見開きながら、私の唇からは「どうして…」と小さく心の声が漏れた。
「全てお話しします、村雲真依子さん。」
数ヶ月ぶりに呼ばれた自分のかつての名前に、私はそれ以上表情を取り繕うことは出来なかった。