ハロー、マイファーストレディ!
私の話を全て聞き終え、谷崎さんに指示を出してから、ようやくジャケットを脱いでネクタイを緩めた征太郎を見て、不覚にも私の胸はまた音を立てた。
ここが、彼のプライベートな空間であることを再認識して、私は勝手に落ち着かなくなる。
地元事務所の二階で匿われていた時も、征太郎の部屋に足を踏み入れたことはなかった。

「俺は議員会館に戻るけど、征太郎はどうする?」
「今日はこのまま上がる。」
「了解。せっかくだから、真依子ちゃんと二人で食事にでも行ったら?」

谷崎さんに問い掛けられ、征太郎は少し考えるように宙を見つめる。
私の胸が“二人で食事”という言葉に、過剰に反応し出す。

「いや、今日は出歩かない方がいいな。あの男の素性が分からないうちは、目立った行動は避けた方がいい。」

征太郎の冷静な発言に、自分でも知らぬ間に期待していた心が簡単にしぼんでいくのが分かる。もしかしたら、昨日のように二人で過ごせるかもしれない。その可能性が、私を一瞬浮き足立たせたことは、もはや否定しようのない事実だった。
それでも、なるべく落胆を顔に出さずに征太郎に視線を向ければ、彼はまた考えるような素振りをしてから口を開いた。

「たまには、ピザでも取るか。ビールもあるし。」
「ああ、そうしろ。後で真依子ちゃんの迎えを寄越した方がいいか?」
「いや、食事が終わったら、俺が直接呼ぶ。気にするな。」
「今日の征太郎の頑張り次第では、呼ばずに済むかもしれないけどな。ちゃんと昨日の反省を活かせよ。」
「うるさい、早く行けよ。」

二人のよく分からないやり取りを聞きながら、理解出来た情報を整理する。
どうやら、私はここでピザを食べることになるらしい。
征太郎とまた少しの間一緒に居られると分かり、私の心はまた勝手に喜び始める。
私も、呆れるくらいに、単純な女だ。

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