ハロー、マイファーストレディ!

「いつのまに彼が出来たの?」
「ん~、まだ付き合ってないよ。デートに誘われただけ。」
「それはそれは、付き合うのも時間の問題だね。」
「いや、まだ分かんないよ。昨日ナンパされただけで、どんな人かよく知らないし。」
「はあ?よく知らない人とデートするの?」
「よく知るためにデートするんでしょ。真依子ってば、相変わらず頭カタいな。」
「まあ、勝手にすればいいけど。何時に約束なの?」
「えーっとね、そろそろここに来てくれることになってて。」
「え?ここに来るの?」
「そう、車で迎えに来てくれるって。」
「へ?車?アンタ、知らない人の車に乗っちゃダメって教わんなかった?」
「大丈夫だよ、小学生じゃあるまいし。変な人じゃなさそうだったし。」
「そんなのナンパされただけで、分かる訳無いでしょう。」
「えー、でも高級そうなスーツ着てたし。」
「アホか~!!」

私は小声で叫びながら、思わず頭を抱えた。
瞳の恋愛となると途端に盲目になるところは、何とかしてほしいと思う。
先ほどまで私に説教を垂れていた親友と、同一人物とは思えない危うさだ。

「あ、もう着いたみたい。」

テーブルの上に置かれていた瞳のスマホがブルブルと震えて、ラインの着信を伝えている。

と同時に、カフェのテラスの前に一台の黒いプリウスが停車したのが見えた。

運転席から降りてきた男に、瞳が笑いかけ手を振っている。
確かに、身なりもきちんとした男だ。
ビジネスマンというよりは、弁護士とか会計士とか、どこかエグゼクティブな雰囲気を漂わせている。
整った顔に、流行をうまく捉えた上質なスーツ。平均的な体型だが、それがむしろ完璧過ぎず、どこか誠実そうにすら見える。
瞳が自信満々で大丈夫だと言ったのも、何となくだが理解できる。
見た目はしっかりとした大人の男という印象を受けるが、中身はどうだか分からない。
何せ、瞳はだめんずを呼び寄せる天才だ。

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