恋愛優遇は穏便に
「あれから政宗には話したの?」
「何を、ですか?」
「ボクが間違ってむつみチャンにキスしたこと」
「い、いうわけないじゃないですか」
「そうだよね。言えないよね」
「ちゃんと私のほうから言いますから」
「納得するかなあ、政宗」
政義さんはまた私の左手をとる。
「こうしたことも話さなきゃいけないんだよ」
政義さんのやわらかな唇が、左手の甲にくちづけを落とした。
手を引っ込めようとしたら、唇を甲から離し、名残惜しそうな顔をしながら静かに手を離した。
「や、やめてくださいっ」
「きれいな手をしていたから、キスしただけ」
ブルブルとカバンの中のスマホが鳴っている。
たぶん、政宗さんからだろう。
「そろそろ帰ります」
「やっぱりそのまま唇にキスするべきだったかな」
「いい加減にしてください。五十嵐室長」
「そういう、口の利き方、よくないと思うけど」
政義さんの声がずしりと重く響く。
こたえたいけれど、政義さんの彼女ではない。
政義さんの言葉を無視し、政義さんの横をすりぬけ、出入り口に向かい、銀色の扉を開いた。
「困った子には、矯正が必要なのかもしれないね」
そういって、クスクスと笑っていた。
「お、お先に失礼します」
「また来週もよろしくね」
政義さんは何事もなかったかのように、ひらひらと手を振っていた。
扉を閉めて、息を吐く。
まだ左手の甲のあたりが熱く感じた。
「何を、ですか?」
「ボクが間違ってむつみチャンにキスしたこと」
「い、いうわけないじゃないですか」
「そうだよね。言えないよね」
「ちゃんと私のほうから言いますから」
「納得するかなあ、政宗」
政義さんはまた私の左手をとる。
「こうしたことも話さなきゃいけないんだよ」
政義さんのやわらかな唇が、左手の甲にくちづけを落とした。
手を引っ込めようとしたら、唇を甲から離し、名残惜しそうな顔をしながら静かに手を離した。
「や、やめてくださいっ」
「きれいな手をしていたから、キスしただけ」
ブルブルとカバンの中のスマホが鳴っている。
たぶん、政宗さんからだろう。
「そろそろ帰ります」
「やっぱりそのまま唇にキスするべきだったかな」
「いい加減にしてください。五十嵐室長」
「そういう、口の利き方、よくないと思うけど」
政義さんの声がずしりと重く響く。
こたえたいけれど、政義さんの彼女ではない。
政義さんの言葉を無視し、政義さんの横をすりぬけ、出入り口に向かい、銀色の扉を開いた。
「困った子には、矯正が必要なのかもしれないね」
そういって、クスクスと笑っていた。
「お、お先に失礼します」
「また来週もよろしくね」
政義さんは何事もなかったかのように、ひらひらと手を振っていた。
扉を閉めて、息を吐く。
まだ左手の甲のあたりが熱く感じた。