恋愛優遇は穏便に
自宅に到着して、ほっと胸をなでおろす。

どうして政義さんはすました顔をして、私に近づいてくるんだろう。

危険人物だってわかっているのに、隙を見つけて割り込んでくる。

政宗さんと付き合っているってわかっているのにどうして。

それなのに、政義さんの顔をみると、心の奥がうずくのはなぜなんだろう。

カバンに入っているスマホのバイブがなっていた。表示画面をみると、政宗さんだった。


「もしもし、政宗さん」


「メールしたんですけど、返信がこなかったので電話しましたが、もう大丈夫でしょうか?」


「あ、ごめんなさい。今、家につきました」


「わかりました。迎えにいきますね」


電話を切ると通勤用の服から長袖のワンピースに着替えた。

以前に政宗さんとデートしたときに買い物をしているときに政宗さんと一緒に選んだ紺色のワンピースだった。

鏡を見ると疲れきった表情を浮かべる私が映っていた。

急いで化粧を直していると、玄関のチャイムが鳴った。


「政宗さん」


「こんばんは。迎えにきましたよ」


政宗さんは私をみて、にこりと微笑む。

やさしい笑顔に迎えてもらえて、週末まで仕事を頑張った甲斐があった。

政宗さんの家に行く途中、信号でとまったときに話しかけた。


「さっきは連絡しなくてごめんなさい」


「別に、いいんですけどね」


心なしか、語尾が強調され、政宗さんが怒っているように感じるのは気のせいだろうか。
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