恋愛優遇は穏便に
その夜は眠れなかった。

いつもならば、心地よい疲れを体に宿してくれるはずなのに。

仕事の疲れが体に残っているはずなのに、目をつぶってもすぐに目が覚めてしまった。

隣をみると、すうすうと優しい寝息を立てて政宗さんは眠っていた。

毎日いろんな営業先をめぐり、契約を交わしたり、営業所の所長としても責任を果たしている。

それなのに私は、体を求めようとしているなんて呑気なものだ。

それにいらない心配もかけてしまったし、まだ言えないこともちゃんと言えていないし、これから政宗さんとどうやって接していっていいか、不安になった。

ふいに左手を天井に向けた。

左手の甲がまだ熱を帯びていて、じんじんと火傷をしたような気持ちになった。

私が間違いさえ起こさなければうまくいっていたはずなのに。

結局、眠ったのか起きていたのかわからないまま、土曜日の朝を迎えた。

もしかして何かがあるんじゃないか、と期待した。

それでも何も起きず、政宗さんは起きて静かに本を読んでいた。

私は上半身を起こすと、政宗さんはニコッと笑顔を見せてくれた。


「おはようございます。むつみさん」


「おはようございます……」


「さて、朝ごはんにしましょうか」


「は、はい……」


政宗さんはベッドを離れ、支度をはじめた。
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