恋愛優遇は穏便に
政宗さんの部屋に戻ってくるなり、後ろから抱きすくめられた。

全身が政宗さんを受け入れようとしているのがわかる。

政宗さんのぬくもりがじんわりと伝わってきた。


「むつみさんはずるい人だ」


腕をほどき、後ろから私の髪の毛をやさしくすいた。


「僕をその気にさせる」


政宗さんから耳元でささやく甘いこの言葉を待っていた。

熱い息がかかり、それだけで鼓動が早くなる。


「我慢してみたのに、台無しです」


「我慢って?」


「答えはすべてが終わってからにしましょう」


「すべて?」


「僕らが休日にやり残していることですよ、むつみさん」


触れられているだけでからだ中が熱くなってチョコレートのように溶けてしまいそうになる。

すると、くるりと正面を向けられた。

政宗さんの顔が近づき、顎をぐいっと持ち上げられると、ゆっくりと味わうかのように唇を重ねた。

たったキスだけなのに、吐息がもれる。

力が抜けそうになるところを政宗さんが抱きかかえてくれた。


「耐えられない自分がいるなんて、情けない」


ぐいっと手をひっぱられ、ベッドに押し倒される。


「この先を知っているはずなのに、何度も味わいたくなる」


覆いかぶさった政宗さんの顔が会社で接するときにみせる顔とは異なり、ベッドだけしかみせない、欲望がにじんだ雄の顔に変身する。


「むつみさんはいけない人だ」


そういうと、政宗さんは唇を私の体に這わせていった。
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