恋愛優遇は穏便に
仕事をしながらも、時計が気になる。

定時になり、就業時間が終わる。

高清水さんに勤務表を提出し、確認印をもらった。

やっぱりこの時間には政宗さんは会社へ戻ってこないのか。

ロッカー室へ向かい、制服から黒のジャケットに白いハイネックシャツ、黒と紺のバイカラーのスカートに履き替える。

今日はもう政宗さんには会えないのか、と会社のドアを開け、外の廊下へ出て、気落ちする。

エレベーターに乗り、一階まで下がり、降りてエレベーターホールからエントランスへと歩いていくと、


「むつみさん」


政宗さんの声がエントランスにこだました。

顔をあげると、政宗さんが私のところまで走ってきてくれた。


「間に合った」


「……政宗さん」


政宗さんは私の顔をみて、ニコリと笑ったけれど、私の洋服をみて、ふう、と息を吐く。


「今から仕事ですか」


「え、ええ」


「契約なら仕方ありませんね。本当だったら、今日、残業してもらいたいところでしたが」


「……政宗さん」


「まあいいでしょう。研修後、ゆっくりむつみさんを味わいますから。今夜は明日の準備があって会えないのが残念ですが」


「研修が終わったらいろいろと教えてください」


「ええ、もちろんですよ。知りたいこと、いろんなことを教えてあげますから」


政宗さんのいたずらな言葉にドキっと胸をつく。

私の表情をみて、政宗さんは軽く笑ってエレベーターホールへと向かっていった。
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