恋愛優遇は穏便に
データをまとめたり、書類を整理したり、指定された書類からの印刷物をつくったり、政義さんに書類を見せてOKをもらってから作業をしたりと雑用に近い物だったけれど、集中して仕事ができてあっという間に仕事の時間が過ぎていった。


「もう時間だけど」


政義さんが優しく声をかけてくれた。

少し頑張れば今やっているデータ入力のものを送ることができる。


「あと少しだけなんですけど、いいでしょうか」


「別に残業してくれて構わないけど、どうかしたの?」


気がつけば政義さんは私の席の後ろに立ち、私とパソコン画面をみていた。


「これを終わらせてから帰ろうと思って」


「いつもなら、時間になったらさっさと帰ろうとするのに」


「今日ぐらいは残業しちゃ、だめですか」


「政宗と何かあった?」


「いえ」


「そっかあ。まあいいや」


そっけない対応だったので、諦めたようで政義さんは自分の席に戻っていた。


「終わりました」


業務時間よりも1時間遅くなってしまった。


「お疲れさま」


「データも無事送って向こうの担当者からOKいただきました」


「そう。よかった」


パソコン周辺の書類をまとめ、帰り支度をはじめる。

勤務表を書いて政義さんに確認のサインをもらった。


「で、今日は会うの? 政宗と」


「え?」


「こんな時間なのに」


「政義さんには関係のないことですけど」


「気になる性分でね」


「今夜は会いませんよ」


じっと政義さんが私を見つめているので、仕方なく力強く言い放つ。


「ふうん」


そういうと、銀ぶちの奥の瞳がいやらしく光ったように思えた。
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