恋愛優遇は穏便に
「お兄さん!?」


政宗さんから聞かされたお兄さんがこの人だったのか。

お兄さんは立ちあがり、カーテンを引いた。

まぶしいくらいの外の光が部屋を照らす。

窓辺にはきちんと着こなしたスーツを着たお兄さんが窓の外の景色を眺めている。

横顔もりりしく、政宗さんよりは若干肌の色が黒くしまってみえた。


「しっかし、いきなりキスするんだもんね。驚いちゃったね」


「こ、これはなかったことにしてもらえませんか?」


「しちゃった事実は消せないよね」


そういうと、窓辺から私のところへ向かう。

体を近づけ、長く細い人差し指の腹で私の唇を撫でた。

どきっとして顔をそむけた。


「お、お兄さんっ。政宗さんと間違えただけで」


「政宗には内緒にしておく。ただし」


「えっ」


「ボクのお願いをきいてもらうからね」


「そんな」


「嫌そうじゃなさそうだよ」


はあ、と軽く溜め息をついた。


「嫌ならここで最後までするけど。もうじき帰ってくるんでしょ、政宗」


「……え、ええ」


「ボクはいいんだけどね。キミがそういう趣味をもってるなら」


「そんな趣味、ありません!」


「残念。やる気あると思ったんだけど。まあ、いいか。楽しみはあとにとっておくかな」


そういうと、私の頬に軽くキスをした。


「お兄さんっ」


「嫌がってなかったからキスしただけだよ」


お兄さんは涼しい顔をして私を見ている。


「まあ最初にキスしたキミにも問題があるけどね」


さて、とベッドから勢いよく立ちあがった。


「ずっとここにいるのも悪いから外出ていくよ。この件は貸しにしておくね」


「貸しって……」


「いずれわかることだよ。また会おうね」


ニコリとほほ笑むとお兄さんは出ていってしまった。
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