恋愛優遇は穏便に
ゆっくり下着と洋服を身につけ、ベッドの淵に座る。

さっきまでお兄さんが座っていた場所だった。

よりによって、間違いでお兄さんにキスしてしまうとは思わなかった。

政宗さんに正直に話そうか。

話したところで政宗さんのことだからものすごく怒るだろう。

せっかく指輪もプレゼントしてもらったのに。

ようやく政宗さんと両想いになれたのに。

どうしよう。

ぐるぐると答えのでないまま、ガチャっと遠くから音がして、それから部屋のドアが開ける音がした。


「遅くなりました。部屋の荷物を片づけていたところ、電話がかかってきまして」


政宗さんが急いで来たのか、少し息が荒かった。

私の隣に腰かけた。


「帰ってきたんですよ」


「……え」


「兄が」


ドキンと胸を打つと同時に唇が軽く震えた。


「……そ、そうですか」


「もしかして、この部屋に来ました?」


「え、いえ」


どうしていいかわからず、いなかったことにした。


「そうでしたか。むつみさん一人にして、危なかったな」


「え、どうして?」


「あ、こっちの話です。さっき電話で家に戻ろうとしたけど、今日はホテルに泊まるって連絡をもらったので」


「そうですか……」


少しだけほっとした。

今から会ったとしたらどういう顔をしていいか、整理がつかなかったから。
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