恋愛優遇は穏便に
「そろそろ派遣、やめてみない?」


「……契約打ち切りっていう話ですか」


聞きたくない言葉だ。

派遣だけど、それなりに仕事に対して貢献してきたつもりだ。

それなのに、もう打ち切りになるのか。

スプーンがスープ皿の淵にあたり、カランと鳴った。

それをみて、政義さんはにっこりと微笑む。


「そうじゃないんだけどな」


「え」


「会議で話があってさ。今、むつみチャンが各部署のブレーン的存在で仕事をこなしてるでしょ。で、上の人たちからも評判がよくて。年齢的にもだんだん派遣の道が狭まっていくっていうの、聞いたことない?」


確かに派遣会社に登録するときに、ちらりと年齢制限はないけれど、実務経験がない場合だと厳しくなっていくという話は聞いたことがあった。


「え、ええ」


「それでね。派遣の期限が切れたら、社員として迎えるのはどうか、という話なんだけど」


「えっ」


嬉しい話、なんだけど。

政義さんはぱあっと明るい表情を浮かべた。


「ね。いい話でしょ?」


「そうですけど……」


「何か不満?」


不満ではないけれど、政宗さんの会社のこともあるし、それに一番は政宗さんにも相談したい。


「今返事を聞けるわけはないから、この話はゆっくり考えて答えを教えて」


「……はい」


スープを食べ終えると、添えられたパンをちぎり、かじる。

ほどよい弾力あるパンを食べていると、魚料理が運ばれてきた。

私の顔をみて、政義さんは嬉しそうに魚料理を頬張っていた。
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