恋愛優遇は穏便に
「ねえ、どうだった? よかったでしょ」


「……政義さん」


政義さんは普段と変わりない笑顔で私に話しかける。

あんなことをしておいて、そういう顔をされても。

一線を越えたはずなのに、どこか他人行儀なのは気のせいか。


「困ったねえ。こんな仲になっちゃって」


「……わ、私」


「最初の頃と変わらずに誰にでもそういう顔みせちゃうなんてね」


そういうと政義さんはクスクスと笑う。


「夢でもみたんですよね、私」


「夢だけにしておく? 一応、とってあるけど」


と、政義さんがポケットからICレコーダーを取り出してみせた。


「まさか、それ」


「聞いてみる? またその気になっちゃうかもしれないけど」


「……そんなの、趣味ありません」

「そう。それなら別に構わないんだけど。既成事実になってしまったね。これからどうしようね」


そういって、政義さんはICレコーダーをポケットにしまった。


「疲れたよね。そこでゆっくりしていていいよ。ボクは隣の部屋にいる。安心して。襲わないから」


と言い残して部屋を出ていった。

こんな場所、すぐにでも出ていきたかったけれど、アルコールとともに全身の疲れがたまって動けなかった。

しかたなく、タオルケットにくるまったまま、横になる。

あんなに抱かれたのに、不思議だった。

抱かれているとき、変な気持ちになった。

あんなに激しかったのに、やさしさがこもっているようにも感じ取れた。

ますます政宗さんに言えない。
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