恋愛優遇は穏便に
結局、寝たのか起きているのかわからないまま、朝を迎えた。

重い体を引きずるようにベッドの下に散らばる洋服を身につける。

白いソファにもたれかかりながら、政義さんが眠っていた。

私の気配に気づき、目を覚ました。


「むつみチャン、おはよう」


テーブルに置かれた銀ぶちメガネをかけて、声をかけるとのんきにあくびをして両腕を天井へと伸ばした。

政義さんはネクタイは外しているものの、昨日と同じYシャツとスラックスだった。

久々にソファで眠ると節々が痛いね、と腕を回していた。


「疲れ、とれた?」


「疲れだなんて」


あんなことされたら疲れるけれど、その前に平気な顔をしているのが腹が立つ。


「あんな声出してたら疲れちゃうよね」


「もういいじゃないですか」


そういうと、政義さんは軽く鼻で笑った。


「さて、どうする。これからのこと」


「これから、ですか?」


「ボクと正式に付き合う?」


政義さんはいつもよりも低く響く声でゆっくり話した。


「え? 付き合うって」


「そう。ボクとお付き合いをはじめるってこと」


「私には政宗さんがいますから」


「まだそんなこと言ってるんだ」


「のんきに言ってますけど、私を襲ったじゃないですか」


「ん、まあそういうことになるかな」


「そういうことになるかなって、どうしてそんなこと……」


自然と涙があふれ、頰をつたっていく。

それをわかっているのに、政義さんがメガネ越しににらんできた。


「好きなものを得るためには容赦しないよ、ボクは」
< 161 / 258 >

この作品をシェア

pagetop