恋愛優遇は穏便に
部屋着に着替え、休もうとベッドに入る。

夢心地になっているのに、昨日の悪夢がよみがえる。

あんな愛し方をされるとは思ってもみなかった。

そういえば、と思い、ふと、自分の指でくちびるをなぞる。

あの最中、一度もキスしてこなかった。

そういうものなのか。

最中も荒々しかったけれど、どこかやさしく扱ってくれていた。

あの感覚はどこかで感じた気がしたんだけれど。

右手をみる。

何もつけていない右手の薬指をじっと目をこらした。

大切な指輪だったのに。

もしかして眠っている間に政義さんが。

ゆっくりしていてもどうしても頭の中には昨日のこと、指輪のことで頭がいっぱいになった。

夕方になり、政義さんに聞いてみたいこともあったから、しかたなくシャツとスカート、ジャケットを羽織り、会社へと向かった。


「こんばんは……」


日曜日ということもあり、政義さんはネクタイは締めず、黒ジャケットにブルーのシャツ、茶色のズボン姿だった。

目を丸くしていたけれど、冷静な政義さんに戻った。


「どうしたの? 今日、仕事こなくていいって言ったのに」


「契約ですから」


「そう。わかったよ。無理しなくていいから」


「……はい」


何事もなかったように自分の席に座り、仕事の準備をした。
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