恋愛優遇は穏便に
「しいて言えば、秘密のおつきあいを延長するってことかな」


政義さんは私をたしなめるように、そういった。

もしかしてそういうかもしれないな、と予想はできていたけれど、そんなこと言わないでほしかった。


「な、何を言ってるんですか」


「返してほしくないの? 大切なんでしょ? 指輪」


ちらりと上目使いをして、さらに私を挑発する。

指輪をなくした私も悪いけど、あんなことをした政義さんが一番悪いのに。


「そんな……」


「じゃあ、もう少しつきあってもらうよ」


「つきあうだなんて」


「嫌だとは言わせないから」


ぎらりと、私に向け、強い眼差しを送り、書類の束を机の上で揃えた。


「今日はいろんなこと、しようと思ったけど、昨日の疲れ、まだあるんじゃない? 休ませてあげる。また金曜日にたっぷり可愛がってあげるから」


そういうと、政義さんは私に目も向けず、棚からまた別の資料を取り出して作業をはじめている。


「お先に、失礼します……」


「お疲れ様」


政義さんは軽くつぶやいて、また作業に没頭した。

会社のドアを開け、外の廊下へ出る。

ふう、と深いため息をつく。

もう政義さんは私のことを自分の女としてみるようになったのか。

政義さんに翻弄されるなんて。

エレベーターを待っている間、カバンに入っているスマホが鳴る。

表示をみると、政宗さんからだった。
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