恋愛優遇は穏便に
ビルから外へと出る。

だいぶ空気が乾燥してきているのか、目の前の商業ビルのイルミネーションが綺麗に映えている。

時折、通勤の道に植えられた街路樹の木々が黄色に染まった葉が風に揺れていた。

その風にあおられながら、家路を急ぐ。

きつくなってきた風に、もう冬になるのか、と独り言と一緒にため息が出た。

足取りが重いまま、冷え切った部屋へと戻った。

部屋の明かりもつけないまま、そのままベッドへと突っ伏した。

天罰だと思った。

政宗さんが若い女性の人と話をしていた。

私よりも若くて知的で美人な人と。

政宗さんはハンサムだから外からみたらあの女性とちょうどいいカップルに見えてくる。

私よりもあの人のことを好きになったのかな。

私が政宗さんに何も言わなくなって、あのきれいな女性に惹かれているんだろうか。

政宗さんはそんな人じゃないと信じたい。

だけど、政宗さんだってまだ若いし、立派な男性だ。

美しくて素敵な女性を好むに決まっている。

わたしに答えを出させて、きれいにお別れをしようと思っていたのだろうか。

そんな……。

政宗さんに会って話がしたい。

そうすれば、誤解も言いたかったことも話せるのに。

ベッドの下に転がるカバンを引き寄せる。

スマホを取り出して政宗さんのアドレスを出してみたけれど、勇気がでなかった。

どうすればいいんだろう。

私は政宗さんのことが好きなのに。
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