恋愛優遇は穏便に
次の日、普通に出社すると、北野さんも高清水さんも目を丸くしていた。


「むつみちゃん、大丈夫なの? 倒れたって聞いたから」


「森園さん、本当に大丈夫なんですか? 今日休むと思ってましたけど」


「契約ですから」


「むつみちゃん、無理しないで。具合が悪かったら帰っていいから」


「北野さんも高清水さんも心配してくださってありがとうございました」


その日は高清水さんが気を使ってくれてできる範囲内の仕事で割り振りをしてくれた。

政宗さんとも会うこともなく過ぎていき、木曜金曜とそつなく仕事をこなしていった。

勤務表に確認印をもらった際に、


「明日の19時、楽しみにしてますけど、無理だったら連絡してくださいね」


と、お店の名前と高清水さん自身のメールアドレスが書かれたメモをもらった。

政義さんの会社へなんとか気力で向かう。


「どうしたの、疲れてるね」


「……お気になさらずに」


いつものようにメールチェックをして仕事を進めようとした。


「心配になるよ。好きな人の心配、しちゃいけないのかな」


政義さんは穏やかな声で私に言った。


「心配してくださってありがとうございます。自分のことは自分がよくわかっているんで」


「ボクにできることがあったら言ってほしいんだけど」


できることがあったら。

政宗さんとのヨリを戻してほしい。

あのときのキスもICレコーダーの件もなかったことにしてほしい。

ただそれだけだ。

でも無理だろう。

「心配してもらえるだけで、十分なので」


そうつぶやいて、作業をはじめた。
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