恋愛優遇は穏便に
自分の家の玄関に入り、力なくしゃがみこんだ。

政義さんに抱かれたのに、まったくぬくもりを感じられなかった。

この先、どうしていくんだろう。

政義さんは私との仲を期待しているんだろうか。

そんなことを思っていたら、政義さんの思う壺だ。

立ち上がり、冷え切った部屋へと入る。

このままじゃいけない。

どうにかして政宗さんに私の気持ちを伝えないと。

スマホを取り出し、政宗さんにメールを送った。

『時間を作ってください。話があります』と。

当然ながらメールの返信はなく、気づけば通勤服のまま、ベッドに突っ伏し、土曜日の朝を迎えていた。

ベッドから降りたとき、隙間風が床に伝い、足元が冷えた。

シャワーを浴び、部屋でのんびりと過ごしてから支度をした。

黒のセーターとエンジのコーデュロイのスカートを履いて、厚手の黒のストッキングとコート、パンプスを合わせて待ち合わせのお店へと向かった。

北野さんと高清水さんがお店を決めてくれて、最近オープンしたばかりの和洋食バルに連れていってもらった。野菜メインのお店ということもあり、8割方、女性が占めていた。

店の奥の4人がけテーブルを紹介してもらった。

一番奥には北野さん、向かい合わせで高清水さん、高清水さんの隣に私が座った。


「まずは飲もっか。わたしはビールにして、麻衣ちゃんは?」


「あたしはカシスオレンジで。森園さんは?」


「……私は」


「ウーロン茶か炭酸水にしておく?」


「大丈夫です。ビールでお願いします」


「うん、わかった」


北野さんが店員さんを呼び、飲み物を注文する。


「食べ物は適当に注文しちゃっていいですよね。サラダと魚系と肉系を中心に注文しちゃいましょう」


さらに高清水さんがメニューをみながら無難な料理を注文してくれた。


注文した品を待っていると、はす向かいの北野さんが少し照れた表情で声をあげた。


「実は聞いてほしいことがあるんだけど」
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