恋愛優遇は穏便に
週の半ばになっても政宗さんとは会社で会っていなかった。

北野さん曰く、所長の研修が入っているのでどうしても直行直帰してしまうとのことだった。

そんな木曜日の朝礼だった。


「これ、届けてほしいんだけど」


北野さんから分厚いA4サイズの茶色のウチの社名が入った封筒を手渡された。


「これは」


「総務に必要な書類。わたしが行ってもいいんだけど、本社とは逆の方へ営業へ向かわないといけないから。麻衣ちゃん、午後いいよね?」


「ええ、大丈夫です」


「お願いね」


北野さんのさりげない振り方に改めて素敵な人だな、と思った。

会社でお昼を食べてから、バスに揺られ、本社へ向かう。

1階の総務へ行くと、高砂さんがいた。


「ご無沙汰ね。元気してた?」


「ええ。高砂さんも元気そうで」


「まあね。それぐらいだもん」


と、ケラケラ笑い合う。


「これ、北野副所長から総務にと」


「ありがとう。わざわざ森園さんを使わなくてもよかったのに」


とふてくされながら、高砂さんが封筒の中身を確認していた。


「最近まで北野さん、頻繁に本社に寄っていったんだけど、森園さん、何か知ってる?」


「え、いえ、知りません」


「そう。まあいいんだけど。書類ありがとうね」


「あ、はい」


私の横を細身のスーツを着た男性が通り過ぎる。


ネームプレートを胸につけている。


「あ、あの人。中途採用の営業の浦賀さんよ」


あの人が北野さんの彼氏か。
< 214 / 258 >

この作品をシェア

pagetop