恋愛優遇は穏便に
「北野さんによろしく伝えておいてね」


「わかりました。失礼します」


高砂さんの質問攻撃をうまくかわしてホッとしながら、玄関ロビーに行くと、浦賀さんの背中が見えた。


「あの、浦賀さん。私、濱横営業所の森園といいます」


私の声に反応し、浦賀さんは立ち止まってくれた。

一見細身だけれど脱ぐとけっこう筋肉がありそうな体型だ。

サイドを刈り上げてすっきりした黒髪の短髪、前髪はあげて横に流していた。

眉毛は凛々しく、きりっとした二重まぶたに、シャープな鼻筋、唇はほどよく厚い。

ここに北野さんを隣に従えれば、美男美女カップルが出来上がる。

「こんにちは。あれ、僕のこと知っているんだ?」


「ええ、北野さんから聞きました。あの、ここへは」


「そっか。北野さんに紹介してもらったんだ。今日は営業の研修をしにきているんだよ」


「そうでしたか」


「素敵な人だね、あの人」


「ええ。うらやましいくらいに」


「元カレにしごかれるのもつらいけど、仕事だから仕方ないよね」


北野さん、浦賀さんにそのことも伝えていたんだ。


「でも、浦賀さんなら北野さんを包み込めそうな気がします」


「そういってもらえてうれしいかな。北野さんの期待に応えられるか不安なところもある。けど、好きっていう気持ちは誰よりも強いから」


「浦賀さん」


「あ、惚気ちゃったかな。ごめんね。初めて会ったのにここまで話しちゃうなんてね」


「いえ。北野さんが浦賀さんのこと好きでよかったな、っていう気持ちわかっただけで、こちらも幸せな気分です」


「北野さんの足を引っ張らないようにしなくちゃ。僕はこれで」


と、浦賀さんは帰っていった。
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