恋愛優遇は穏便に
マンション前にシルバーメタリックの車が止まっていた。

そういえば、政宗さんとは会社の営業車でしか車に乗っていなかった。

セダンタイプの車だけれど、中は新車の独特の匂いがする。

車内を見渡してみても、どこを見てもやっぱり新品の輝きを放っている。

この車は新しい彼女のために買った車なのだろうか。

ふと、1階ロビーで親しくしていた黒髪の女性を思い浮かべた。


「乗ってください」


「は、はい」


私を助手席に案内して、政宗さんは運転席に乗り込んだ。

てっきり政宗さんのマンションへと行くのかと思っていた。


「車、買ったんですね」


「ええ、まあ」


さすがに黙ったままだと余計空気が重くなる気がしたので、話しかけたけれど、つれない返事だった。


「あの、どこかへ行くんですか」


「ええ」


見慣れた風景が広がる。

クリスマスの夜だから、歩道には観覧車のイルミネーションを見ながら歩くカップルたちが大勢いた。

それを尻目に車は進む。


「あの、もしかしてレストラン予約したんですか」


「さあ、どうですかね」


あの高層マンションへ差し掛かる道へと進んでいった。

この先には食事する場所はあまりなかったはずだが。

大通りから左に折れた道を車で抜けると、駐車場が見えてきた。


「着きましたよ」


「えっ」


「話し合う場所にはふさわしくないでしょうけど」


そこは政義さんの住むマンションの駐車場だった。
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