恋愛優遇は穏便に
来客者専用駐車場に車を止めると、政宗さんはシートベルトを手際よく外した。


「降りてください」


「ここって、お兄さんのマンションですよね」


「ええ。そうですけど」


「だからって話し合いするって言いましたよね」


「僕とむつみさんの二人だけの問題じゃないですよね。何か都合悪いですか?」


「そんなことは、ないですけど」


「では行きましょうか」


シートベルトを外し、しぶしぶ外へ出る。

なんども通っていたからエントランスもエレベーターホールも、エレベーターの中もなじみのある風景だった。

政義さんの住む階に到着すると、足がすくんだ。

それでも私の前を歩く政宗さんは歩くスピードを緩めなかった。

やっとの思いで政宗さんの後ろに立つと、私の顔を見ずに政義さんの玄関チャイムを押した。

すぐにガチャっとドアが開くと、政義さんは笑顔を私に向けていた。


「やあむつみチャン。やっぱり願い叶ったね」


「政義さん……」


「さあ、中へ入って。本当に嬉しいよ」


会社にいたときとは違って、弾むような声だ。


「クリスマスの食事会をしようと兄から提案されました」


政宗さんは静かにそう言って、玄関から中へと進んだ。

私も政宗さんの後ろを歩く。


「せっかくだから楽しもうと思ってね。準備したんだよ」


ダイニングに誘導した政義さんがやけにうれしそうだ。

テーブルの上にはたくさんのオードブルが並んでいる。


「本当は手作りしたかったんだけど、時間がなかったから出来合いのもので済ませちゃったけど」


「兄さん、ありがとう」


「だって、今日は特別な日なんだからね。いろいろと」


というと、政義さんはいやらしくクスクスと笑った。

< 231 / 258 >

この作品をシェア

pagetop