恋愛優遇は穏便に
「ほら、座って。せっかくのディナーがあるんだから」


といって、政宗さんは奥の席に座る。


「横、どうぞ」


と政宗さんが隣の席を指定した。

しぶしぶ政宗さんの隣に座ると、政義さんは冷蔵庫からシャンパンを取り出し、じゃあ、ボクはむつみチャンの向かいにしようかな、と向かい合わせに座った。

私の顔が凍りついているのがわかっているのか、政義さんの口元が緩んでいる。

空のシャンパングラスに黄金色に輝くシャンパンが注がれていく。

政義さんがすべてグラスにシャンパンを注ぎきると、グラスを持ち、立ち上がった。政宗さんもグラスを持ったので慌てて私もグラスを持った。


「それでは、みんなで過ごせるクリスマスと、ボクの会社に勤めてくれたむつみチャンに乾杯」


「乾杯」


不思議な光景だ。

政宗さんも政義さんもいる空間に私がいる。

口にしたシャンパンの辛い味が喉を伝わっていった。


「さあ、食べてよ。ゆっくり語り合いたいから」


とても美味しい料理なのに、喉を通らない。


「むつみチャン、口に合わなかったかな? ホテルのディナー取り寄せたんだけどなあ」


「美味しいです……」


「まあ、まだ夜はこれからだからゆっくり食べてよ」


政義さんは嬉しそうにチキンをナイフとフォークを使って丁寧に食べていた。

政宗さんは隣で静かにローストビーフを味わっていた。
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