恋愛優遇は穏便に
大きく息を吸い、大きな声で政義さんに言った。


「政義さんとは付き合いませんから」


「ふうん。よくそんな顔していうね」


「……元はといえば、私が政宗さんと間違えて政義さんとキスしたのが悪かったんですから」


「むつみさん……本当ですか」


横に座って黙ってシャンパンを口にしてから、政宗さんがつぶやいた。


「……ごめんなさい。政宗さんを待っていたとき、寝ぼけてしまって」


「でも気持ちよさそうだったけどね」


政義さんは焚きつけるようにわざと甘く低く言い放つ。


「だからあれは間違えたって言ったじゃないですか」


政義さんは背中を後ろにそらし、顎を上げ、下目遣いでこちらをみていた。


「それなのに、どうしてあんなにキスしたんだろうね」


「だってそれは政義さんが」


「ボクのせいだっていうのかな? 責任を全部押し付けるだなんて、むつみチャンよくないよ」


「私も悪いです。ですけど、無理やり押し倒してICレコーダーに吹き込むのはどうかと思います」


「むつみさん、それ、本当なんですか?」


政宗さんが苛立ちを隠しきれず、こぶしを作ってテーブルを叩いた。


「政宗さんが研修旅行へ行っているとき、です……」


「どうしてそのことを言わないんですか」


「ごめんなさい。ちゃんと言いたかったんですが、言えずにいました」


「まあ、こうやってここに証拠もあるんだしね。もういいんじゃない? こんな状況じゃあ、政宗とは付き合えないよね」


政義さんは前のめりになり、挑発するようにまたICレコーダーを太く長い指先でつついていた。
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