恋愛優遇は穏便に
開け放たれた部屋へと連れて行かれる。

隣のダイニングとは違って、ベッドだけの薄暗い部屋だ。

ベッドに連れていくと、私を押し倒した。


「政義さん、やめて」


「いいじゃない。生であのICレコーダーに吹き込んだ声を聞かせてあげれば」


ベッドに脇に置かれていた紐を手にすると、私の手首を縛り、アイマスクをかけさせられ、目隠しをされた。


「や、やめて」


「おりこうさんにしないと、壊れてしまうよ」


政義さんが耳元で囁く。


「こんなのは、嫌。お願い、手首の紐を解いて」


政義さんは私から体を離す。

遠ざかる足音がする。

どうしてこんなことをしに、政義さんの家に来なくてはいけなかったの。

政宗さん……。

また足音がベッドに近づいてきた。

私の体の上にまたがってきた。

熱い息が首筋にかかる。

恐怖と苛立ちと自分の不甲斐なさに気持ちの整理なんかつかない。

ただ涙があふれるだけだ。


「……私は、政宗さんのことが好きなの! だから離して」


心から叫んだあと、右手の薬指に何かをはめられた。

ひんやりとした感触が皮膚を伝わってくる。

久しぶりにそこに帰ってきた、そんな感じがした。

これはもしかしてと思っていた矢先、目隠しをとられた。


「好きなら離しませんよ」


覆いかぶさっていたのは政宗さんだった。


「ど、どういうことですか」


「まずは、この状況をなんとかしようっていう気持ちにはなりませんか?」


そういうと、唇を塞がれた。


久々の政宗さんとのキスはとろけるように熱い。

やめようと首を振っても、顔を手で覆い、するりと舌を絡ませてきた。

政宗さんの味を堪能しすぎて頭がクラクラしそうになった。

ようやく唇が離されて、暗がりの政宗さんが荒く息をしながら、舌舐めずりをして私をじっと見下ろしている。


「お兄さんが……まだそこに」


「とめられませんよ。今は」


そうして、縛られた私はなすすべがなく、政宗さんに抱かれた。
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