恋愛優遇は穏便に
定時に終わり、着替えを済ませて帰る。

ロビーに降りるころに政宗さんに出会えるかな、と思ったけれど営業先からまだ戻らないと踏んで派遣会社のあるオフィスビルへ向かった。

まだ日中の熱は冷めず、アスファルトやビルの壁の照り返しがキツくてちょっと歩くだけでも汗が流れていく。

街のランドマーク的役割の複合施設の中に建てられた大きなビルへと向かう。

派遣会社のオフィスに行くのは登録してから立ち寄っていない。

スキルアップの講座も開かれているらしく案内がよくメールで来ているのだが、時間が合わなくていけない。

登録をしに行くときのことを思い出し、ドキドキと胸を打つ。

最上階のオフィスフロアにたどりつき、派遣会社のロゴが見えると、ガラス張りの扉を開き、目の前に置かれた電話で中の人を呼ぶ。

営業スマイル全開の態度の受付の女性が応対して応接室へ案内された。

しばらくすると、背の高くがっしりとした体型で白の半そでボタンダウンシャツを着た男性がやってきた。

首にはIDカードがつるされており、顔写真の横に『郡司』と名前が載っていた。


「こんばんは。ごぶさたしてます。森園さん、急にお呼び立てしてしまって」


「いえ、大丈夫です」


「それでお仕事の件なんですけどね」


「あの、もしかして今の勤めている会社のことではないですよね」


郡司さんは椅子に腰かける途中で目を丸くする。


「違いますよ。所長からは契約期間までお願いしますと言われていますから」


「安心しました」


私の声を聞くと、気になりますよね、と言って椅子に腰かけた。

昼からのモヤモヤが晴れた気がした。
< 25 / 258 >

この作品をシェア

pagetop