恋愛優遇は穏便に
廊下だけ照明が灯され、目がくらんだ。

中へ進むと政宗さんはにこやかに対応する。


「あの、所長、何をすれば……」


「所長だなんて、そうかたくならなくていいですから」


といって、会社のドアの内側の鍵をガチャンと鈍く音を立てて閉めた。


「もう僕も仕事を終えましたから」


政宗さんは、私の左手首をとると、引っ張るように歩きだした。

試作室のドアを開けると、私を先に入らせて、内側から鍵をかけた。

政宗さんは入り口を背にして私と向かい合うように立っていた。


「久しぶりですよね。このシチュエーション」


「……ええ」


「残業にはぴったりな場所かな、って思いましてね」


廊下の蛍光灯の光がガラス張りの試作室に差し込まれる。

穏やかな顔に潜む、ギラギラと野生味溢れる強い瞳が見え隠れした。


「むつみさん、どうしてちゃんと僕に相談しなかったんですか。いろいろと」


「それは……」


自分でなんとかなると思っていたし、まだこれから先の結婚のことも考えていたから。


「話したくはないってことは、まだ隠しているんですね?」


「そ、そうじゃないんです。タイミングが……」


「タイミング、ですか。そうかもしれませんね。僕でいう、恋愛のプランですかね」


「プラン、ですか」


「ええ。もちろん。僕とむつみさんが一つになるための最適なプランを練っていたところでした」


政宗さんは私の目をまっすぐに見て話してくれた。
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