恋愛優遇は穏便に
着替えを済ませ、会社をあとにする。

エレベーターに乗り、1階に降りる。

ロビーにさしかかったとき、政宗さんが走ってビルの中へ入ってきた。


「間に合って、よかった」


政宗さんは汗をぬぐいながら、私に近づいた。

はあはあと息をきらしている。

まだ外はうだるような暑さだろうか、ガラス窓越しから日差しがまぶしく降り注いでいた。


「そんなに走ってこなくてもいいんですよ」


私の話を聞くと、政宗さんは屈託のない笑顔をみせた。


「だって、むつみさんにちょっとだけでも会えると思うとどうしても走りたくなるものです」


さわやかな笑顔にやられそうになる。


「それより、むつみさん、なんだかニコニコしてますけど、会社で何かありました?」


「え、あ、その」


「隠し事ですか?」


「派遣会社の件でちょっと」


「担当者から何か言われたとか?」


「いや、そうじゃないんですけど……」


「まあいいです。今話を聞きたいところですが、これから書類をまとめないといけないので。週末にゆっくり聞かせてもらいますから」


政宗さんは少しだけ艶っぽさを含ませてまた笑った。


「それでは、お先に失礼します」

「お疲れ様でした。また明日」
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