恋愛優遇は穏便に
「森園さん、どうかしました?」


隣で心配そうな顔をしながら、郡司さんが声をかけた。


「え、あの……。なんでもないです」


「何か質問があればお聞きしますが」


「特にないです」


その人は私の話を聞くとうすら笑いを浮かべた。


「知りたくないんですか。ボクは逆に聞いてみたいな。会ってまもなくすぐに打ち解けて始めたりする原動力とか。それと誰とでもできる精神力とか」


そういうと、ニヤリとその人は笑っている。


「そ、それは……」


「いろんなチャレンジ精神があるのはウチの会社のウリでもあるし。とくに今回の仕事で開花させるいい機会だとボクは思うけど」


「そ、そうですよね」


相槌しか打てなかった。みかねて郡司さんが助け舟を出す。


「森園さんのやる気次第ですからね」


「え、ええ」


郡司さんはちらりと私を見て、それから腕時計をみた。


「それではこれで顔合わせを終了させていただきます。短い時間でしたがお時間をおとりしてすみません」


「いえ」


まだその人はずっとこちらをみていた。

高鳴る胸をおさえ、郡司さんとともに会社をあとにした。
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