恋愛優遇は穏便に
一階のロビーに降りると、ロビー中央のベンチに灰色のスーツを着て長い足を組み座っている人をみかけた。

気づかないふりをして横切ろうとしたときだった。


「まだビルの中にいると思ってね」


銀色のメガネが光ったように思えた。

その人は、すくっと立ち上がり、ニコリとほほ笑む。

堂々とした雰囲気に圧倒し、立ち止まってしまった。


「……お兄さん」


「いったでしょ。またいつか会えるって。これも運命なのかな」


「運命って……」


「で、ボクとの仕事はどうするの? 辞めるの?」


「……それは」


「仕事は仕事。プライベートはプライベートなんて、社会人になればあたりまえの行動だけど」


「そうですけど」


「キミの資料、見せてもらった。秘書検定受かってるし、前職でも会社に貢献してるし、長い期間勤めてるんだからちゃんと活躍してる。こんないい人材、みすみす見逃すなんてもったいないなあって思ってさ」


そういうと、お兄さんは頷きながら笑っている。
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