恋愛優遇は穏便に
「今日、来てくださるなら、一緒にお弁当つくったのに」


「今日は北野さんが戻る予定だったんですけど、急きょ先方から呼び出しがありまして。で、僕になりました。一緒にお昼ができるときには連絡しますよ。むつみさんの手料理が食べられるなら」


そういって私をとろけさせるような笑顔で政宗さんはかえしてくれた。


「それでも、こうやってむつみさんと一緒にいられる時間があって幸せですよ」


「私もです」


休憩時間の1時間が短いと感じる。ご飯を食べ、普通にしゃべっているだけで過ぎていく。

すでに政宗さんはご飯を食べ終え、午後の資料づくりをしていた。

私がご飯を食べ終え、片づけをしようとしたときだった。

政宗さんの目がギラリと輝いたようにみえた。


「むつみさん、今日、残業します?」


政宗さんから発せられる甘く縛られたい空気に絡まれ、私は立ち止まった。


「……ごめんなさい。今日は」


「何か、用事でも?」


「ええ、ちょっと」


「そうですか。わかりました。また明日、楽しみにしてますから」


さっきまでの甘い空気がなくなり、政宗さんは資料に目を落していた。


「本当だったら、残業してほしかったんですけどね。試作室で僕と一緒に」


そういうと、政宗さんはいたずらに口角を吊り上げて笑っていた。
< 66 / 258 >

この作品をシェア

pagetop