恋愛優遇は穏便に
午後の営業先に向かう政宗さんに声をかける。


「政宗さん、あの」


「どうかしましたか」


政宗さんは笑みをたたえ、首をかしげている。


「今夜、残業できなくて、ごめんなさい」


「いいんですよ。本当なら濃密な時間を過ごしたかったんですが。そのかわり、明日、僕の部屋でじっくりと残業してもらいますから、そのつもりで」


「は、はい」


「ここでキスしたいところですが、明日までガマンしますよ。ガマンするってことはわかってますよね、むつみさん」


「ええ」


「午後の仕事の活力になりそうですよ。それではいってきます」


政宗さんは艶っぽい顔をして、出ていった。


あの顔をされると、どうしてもカラダが身動きがとれなくなる。

まだ昼だというのに。


ドキドキが抑えきれないまま、午後の仕事の準備をしていると、何食わぬ顔で高清水さんが帰ってくる。


「ちょうどロビーで所長に会いましたよ」


「そ、そうですか」


「あたしがいなくてよかったですね」


「ちょ、ちょっと高清水さん」


「冗談ですよ。昼間からおノロけお疲れ様です」


高清水さんは茶化すように笑い、わたしも照れ笑いを浮かべた。
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