恋愛優遇は穏便に
「あの、政義さん、今日は何をすればよろしいでしょうか」


「そうだなあ。まだはじまったばっかりだから、まず手はじめに本棚の前に置いてある段ボール、片づけてくれないかな」


「はい、わかりました」


席を立ち、段ボールから書類の入ったバインダーや資料本などを取り出し、空いている棚の中にしまっていった。

気がつけば、政義さんが私に近づき、のぞきこむように目の前でしゃがみこんでいた。


「むつみチャンはどういう仕事、したい?」


「えっ。まだ入ったばかりでどういった仕事といわれても」


やさしい笑顔で私を見ている。

包容力のある雰囲気はやっぱりお兄さんだけあって政宗さんに似ている。


「ゆくゆくはこの部署を大きくしたいんだ」


「そうですか……」


「創設メンバーとしてむつみチャンには頑張ってもらいたいんだ」


甘い空気が政義さんから流れてくる。

気にしないフリをして別の段ボールを開けて本を取りだした。
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