月星鬼
街灯が照らす道二つの影の周りに三つの影がゆらゆら動く。
一方は朱色と紺の袴姿の袖を掴まれ歩く。
「俺は蓬の…」
「言わなくて大丈夫。」
金色の目が辺りを見渡しながら話す。
「ねぇ…怖い?」
誰かを失うことになったら…
「あぁ…____沙羽も居なくなるなよ。」
「沙季こそ…______」
2人の言葉は受け取り合い闇に消えていく。
「和菓子美味しかったね。」
「あぁ。お袋に礼しとかないとな。」
2人は笑った。
頭上では月も笑っていた。
「今日は綺麗な三日月…
星たちが奏でる微かな音。」
それを聞き取れるのは僅かな者のみ。
いや、選ばれた1人の者のみ…____
隣で黒猫が喉を鳴らしながら優雅に歩いていた。
‘沙季。沙羽。早く。帰る。父。待ってる。’
「そう。急がなくちゃね。」
2人の影は瞬きの間に消えていた。
強風が吹き荒れガサガサと木々が茂った。