愛と哀




「七乃、泣かないで」



優しく呟いて、彼は私から腕を離した。



肩を掴んで、
私の体を自分の方に向けた。



彼は私の顔しか見てない。
包丁の存在に気づいてない。





「愛してる……七乃」


「夕麻くん……」



包丁を握りしめる彼はニヤリと笑った。


私は大きく深呼吸した。




< 267 / 283 >

この作品をシェア

pagetop