初恋も二度目なら
「ああ。でー、悠里はよく父さんの横に座って、一緒に絵描いてー、俺とフミ兄(にい)は、その辺駆けまわって遊んでたよなー」
「そーそー。母さんはピクニック気分で4段重ねの弁当作ってさ」

ニコニコしている部長の横顔を見ながら、私は束の間、その時の長峰家ののどかなひとときを、実際私も一緒にその場で体験しているかのように、思い描くことができた。

・・・よく考えてみれば、おつき合いをしていた頃にも聞いたことがない、部長のご家族や子どもの頃の思い出話を今、私は聞いてるわけで・・・。
だから、6年前おつき合いをしていた「長峰さん」より、今の「部長」の方が、より身近に感じるの・・・かな。

「・・・小夜」
「はっ?はいっ?」
「そろそろあっちに戻るか」
「ああはいっ、そうですねっ」
「・・・やっぱおまえ酔ってんだろ。顔がボーっとしてんぞ」
「そうですか?私、意識もハッキリしてるし、自分で歩けますよ?」
「あ、そ。おまえがそう言うなら・・・。にしてもおまえ、意外と飲めるんだな」
「そうですねぇ。こんなにたくさん飲んだのは、生まれて初めてですけど、ワイン美味しいからつい」


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