残業しないで帰りなさい!
背は高いのに顔が小さくて、整った顔立ちに黒いサラサラの髪。
立ち姿もスッとしているし、確かに王子と評されるだけのことはあるのかも。
うたたね王子、なんて言われるのは眠そうにしているから?
「なあに?」
私が熱心にじろじろと見たせいか、怪訝な顔で見下ろされてしまった。
「あー、いえ、えっと、藤崎課長は何をしにこのフロアに来られたのかなと思って……」
「何って、見回りだよ」
藤崎課長は面倒くさそうに言って頭をかいた。
「見回り?」
「そっ!君みたいに残業してる輩に声をかけて追い帰してんの」
「はあ……」
「うち、残業削減に力入れてるんだけど、知らない?それにさ、ブラック企業だなんて騒がれて調査されても困るからね」
「そう、なんですね」
見回りなんて、そんなことしてたんだ。知らなかったな。
「青山さんだよね?よく残ってんの?」
「いえ、今日は特別に遅くなってしまって」
私がバタバタと両手を振って大袈裟に否定すると、藤崎課長は顎に手を当てて目を細めた。