残業しないで帰りなさい!

4階かあ……。

ちょっとドキドキしてしまう。だって、4階には人事課もあるから。

藤崎課長にばったり会ってしまったら、どうしよう。

実はあれから、課長には一度も会っていない。私が非常階段に行かなかったこともあるし、残業も遅くまでしていなかったから。

会いたいと思う気持ちもあるけれど……。
会ってもどうしたらいいのかわからない。
会ったら会ったで、ドキドキして挙動不審になりそう。

はあー……。
ため息をついてエレベーターを4階で降りた。

時計を見ると10時50分。4階の給湯室に行くと久保田係長が恐ろしい形相でお待ちかねだった。

久保田係長せっかく綺麗なのに、眉間にシワなんか寄せて、もったいないなあ。

「遅いっ!それにアンタが来いって最初から言ってたでしょ!余計な手間かけさせないで」

「すみません」

強い口調に、小さくなって頭を下げた。

「6人分」

「はい」

「商談が終わったら連絡するから、片付けて」

片付けもですか?ちょっと首を傾げたら、久保田係長が目を細めて怖い顔をしたから、すぐに姿勢を正してうなずいた。

「わかりました」
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